2008年07月23日

二人で買い物

妻が新しい車を買った。濃紺のボディーでピッカピカである。二人で、ドライブを兼ねて少し遠い街へ買い物に来た。大きな街の大きなスーパーである。私にとって、買い物は少し退屈で、最初は妻と一緒にあれこれ品物を見ていたが、店内をあちこち歩き回るのに疲れて、私ひとり車をとめているパーキングへ戻ってきた。

このパーキングは、スーパーの屋上に作られていて、周りにはフェンスが張り巡らされている。車の中からだとフェンスと青空しか見えないので、フェンスに近づいて周りを見渡してみた。

フェンスの外は別の建物のはずだが、建物どうしの間隔は、広くて3cm程度、高さに至っては数ミリの誤差も無いほど統一されているため、屋上がまた別の地上のような平面を構成している。遠くには、フェンスのついた学校のグラウンド、屋上のはずなのに道路や信号機も見え、地上と同じように車も走っている。

そうこうしているうちに妻が買い物を終え戻ってきたようで、車の方から私を呼ぶ声がする。妻は、自分の買った新車なのに、あまり運転しようとしないので、私がいつも運転手である。パーキングから出て、本当の地上の道路と合流すると、意外なほど車や人の通りは少ない。昼間だというのに、地上の道路へは自然な光が届かず、街灯がともされていて、地下を走っているようだ。

しかし、少し走ると突然街は途切れ、田んぼ路になった。遠のいてゆく街をバックミラーで見ると、街自体が一つの建物のように真四角になっているのが分かる。何やら、映画を見て、映画館を後にする時のようだ。

田舎道を更に走ると、道路の舗装もなくなり、砂利道へ、泥道へと変わり、ぬかるんだ道へ変わった。もう車では先に行けない。私たちは、自転車に乗り換え、二人乗りでさらに進んだ。
しばらくすると潮の香りがしてきた。もうすぐ海なのだろう。自転車をこぐのに一生懸命だった私は、いつしか見知らぬ道に迷いこんでいる事に気付いた。妻は後ろで船をこいでいる。
道は更に狭くなり、自転車さえも通れない、人ひとりがやっと通れるほどの幅しかない。私たちは、自転車をも乗り捨て、もはや道とは言えない道を歩き始めた。
海は前方に見えるのだが、上り坂ばかり。左右は切り立った岩山、ではなく泥山。
粘土のようにぬるぬるしている山肌に手を当てながら登ってゆく。左手の山は海へと変わり、遥か下には白い波が砕け散っている。
気づくと、少し後からついてきていた妻も、もう疲れ果てたのか、しゃがみ込んでいる。この先、更に急な上り坂も目の前に見えている。私は、妻のところへ近寄り、一緒にしゃがみ込んで休憩することにした。
いつもは、どうでもいい話で笑ったり怒ったり話の尽きない二人だが、今回ばかりは、ため息ばかり。

妻の疲れも少し和らいできたようだが、遠くの夕日を眺めながら、二人でもう少し潮風に吹かれていよう。

二人で家に帰っているつもりだったが、私たちはどこへ向かっているのだろうか。
元々、出かけたのも買い物のだったのか。
帰る家が本当にあるのかさえ今は分からない。
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posted by yuki at 10:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月05日

遠い街への出張

私は、仕事で遠い田舎町へ出張していた。
田舎町とはいっても、私の出張した中心部は、高層ビルがいくつかあり、路面電車も走っている。
その街での仕事を終え、今日は本社へ帰る日である。
宿泊していたビジネスホテルから歩いて数分の処に、かなり古びた木造の小さな駅がある。
待合室もなく、改札の脇に小さな売店と駐輪場。
改札を入れば正面に複線の線路があり、その両脇にホームがあるだけ。
しかも、向こう側のホームに渡るには線路をまたいで横切らなくてはいけない。
こんな駅の風景は、改札を入るまでもなく一目で見渡せる。

今日この駅から本社へ帰らねばならないのだが、まだ帰りの切符を買っていない。
よく見ると、この駅に駅名が無いし、私は何という街に仕事に来たのか思い出せない。
まぁ、自分の帰るべき駅だけはハッキリわかるので、この駅のことが分からなくても何も問題ない。
とにかく、改札横の売店で切符を買うことにした。売店には、まだ高校を卒業したばかりと思われる愛想のいい女の娘が2人、暇そうにしている。
考えてみると、売店で切符を買うのも変な気がするが、買えそうな処はそこしかないので仕方ない。
「すみませ〜ん。熊本駅まで大人一枚ください。」
「え、熊本駅? … どこですか?」
「え、九州の熊本の …。」
「ちょっとお待ちください。」
売店の女の娘は顔を見合わせたが、一人の娘が小走りでホームにいた駅員を呼びに行った。
その駅員さんは、どうも駅長らしく、とても愛想の良さそうな60代後半のガッチリした男性で、ニコニコして近づいてきた。
「いや〜、えらく遠いところからお見えなんですね〜。ここ数十年そちらの方からのお客さんは一人もいらっしゃらないんで、あの娘らが知らんのも無理ないですは、ハハハ・・」
話が長くなりそうなんで、話をさえぎって話した。
「切符をお願いしたいんですが。」
「あ〜、そうですか。ちょっとお待ちを…。」
肩から掛けている革の鞄を覗き込み、分厚い冊子を取り出し、指に唾を付けながらめくり、
「あ〜、往復ならあるけど、片道はきれとるなぁ…。往復は要らんかね?」
「いやぁ〜、帰るだけなもんで…」
「ですよね〜、どう見てもそんな感じだもんね〜。ん〜どうしたもんかね〜」
切符に売り切れってあるのかなぁ…、指定席でもないのに、と思っていると、ホームの方から駅長を呼ぶ声がした。
「すまんねお客さん。どっちにしても夕方まで列車は来ないんで、ゆっくりしとってな〜。また後で。」
そ言うと、ホームに戻ってしまった。仕方ないので、売店の女の子に訊いてみた。
「今そこにある切符の中で、一番遠くまで行ける切符って、何処まで?」
「掛川駅までです。」
掛川って静岡県だったっけか?
しかし、ここが何処か分からないと、熊本に近づくんだか遠くなるんだか分からない。
まず、ここが何処かを聞いた方がいいのかもしれないが、仕事で来ているのに、いまさら『ここは何処?』なんて聞いたら変に思われるだろう。
でも、このままでは、らちがあかない。
「この辺りの地図はありますか?出来るだけ広範囲のやつがいいかな。」
売店の娘は、丁寧に地図を広げて、現在の場所を指してくれた。
かなり大雑把な地図で、ここが大きな半島の端っこであることは分かるが、地名らしきものが全くない。
他に目印らしきものは、洞窟・ほこら・小さな町の印が所々に…。以前見たような地図ではあるのだが…。
map.jpg
posted by yuki at 11:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月13日

学校

 私は高校2年生。どういう理由があったのか、新入生でもないのに初めての登校である。勉強の遅れを取り戻すために、今は学習意欲に燃えている。
正門から小さな校庭を横切りると、3階建ての校舎がある。窓ガラスは割れ、窓から放り出されたのか壊れた机などが窓の下に散乱している。校舎の中は一見廃墟かと思うほど壁がはがれ、穴が開き、壊され、もちろんドアも窓も壊されて、四角い枠だけが残っている。
廊下には割れたガラスや壊された壁のクズが散乱しているため裸足や上履きで歩く状態ではないので、靴を履き替えるでもなく教室を探した。目的の教室は1階の3つめの教室。元々「○年○組」という表示はあったと思うが、今はない。「3つめ」というだけでその部屋に入った。
 教室に入ると、私を含め生徒は4人。先生は白髪を丸坊主にした定年間際の男の先生である。よく見ると、懐かしい小学校時代の恩師である。「○○先生じゃないですか!」と話しかけると、微かに笑みを浮かべられたが、特に会話もなく、チャイムが鳴るわけでもなく、授業が始まった。
 授業は古代史、古代エジプト文字についての説明。私は、疑問点を徹底的に質問し、先生も熱く指導をされた。そのさなかも、廊下や別の教室では生徒が暴れているらしく、ガラスの割れる音、物が壊される音、木刀のようなもので叩く鈍い音。
いつの間にか同じ教室に居た生徒3人も居なくなっていて、私と先生の2人だけ。廊下から、「ジャリ、ジャリ」という割れたガラスの上を歩く2・3人の足音が近づいてくる。と思った瞬間、片手に木刀を持った生徒が無言無表情で、先生の襟首をつかんで他の場所へ引きずって行った。
 声も何もしない別の教室から、木刀で叩く鈍い音と、うめき声。どうすることもできない私は、周りを見渡した。今気づいたのだが、校舎の周りは異常に高い塀と頑丈な鉄格子。生徒は10人程度。
無表情で、片手に木刀かチェーンをもってゆっくりさまよっている。

先生もいない。何も持たない生徒は、私だけになってしまった。
posted by yuki at 11:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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